50代、60代とシニア世代の婚活市場がじわじわと盛り上がりを見せている。
コロナ禍で将来の不安を感じ、結婚や再婚を真剣に考えるシニアが多いと婚活の専門家は語る。
今注目の“シニア婚活”。コロナ禍でも盛況だという婚活パーティーの実態や婚活の事情、実体験をリサーチした。
◆「シニア婚活」ブーム「8割が50代以上」
「結婚相談所の会員の多くが50代以上のシニア世代。シニア向けの婚活パーティーはとくに需要が高く、開催頻度は20年前の4倍に増えているんです。以前は月1回程度でしたが、ここ数年は毎週開催するようになりました」
こう話すのは、シニアの婚活事情に詳しい婚活アドバイザーの立花えりこさんだ。
立花さんは東京・銀座で創業29年になる老舗の結婚相談所Bゼルムの運営も手掛けているが、その会員数の内訳を教えてもらったところ、
20代…2%
30代…6%
40代…14%
50代…36%
60代…34%
70代以上…8%
なんと、50代以上の人が78%を占めている。
ちなみに男性が4割、女性が6割と女性のほうが多いそうだ。
「50代以降、60代も70代の方もみなさんまだまだ人生を楽しみたいという気持を持っています。
最近では“シニア婚活”を取り上げるメディアが増え、年齢に関係なく『婚活していいんだ』という自信を持てるようになったこともシニア婚活ブームの後押しになっていると思います」(立花さん、以下同) SNSやスマホやインターネットの普及で情報を集めやすくなったことも、「シニア婚活」市場を盛り上げる追い風になっていると、立花さんは分析する。
◆コロナ禍でも婚活パーティーが人気
コロナ禍でも婚活パーティーは規模を縮小しながら開催しているという。
「コロナ以前は、パーティーの定員が男女12名ずつでしたが、いまは男女7名ずつに減らして実施しています。お席にアクリル板を設置し、会場の換気と検温・消毒を徹底し、マスク着用にて進行しています。
緊急事態宣言中は中止となる場合もありますが、とくに60代、70代向けの婚活パーティーは安定した人気があり、コロナ禍においても月2回開催しています」 ◆シニア世代「婚活アプリは不安」 8年前に離婚を経験した60代の女性Mさんは、 「老後が心配なので再婚したい気もあるけど、出会いもないし。婚活アプリも試してみたいけどなんとなく不安ですしね」 と、婚活をためらっているという。
若い世代であれば気軽にアプリを活用するという人も増えているが、一部の婚活系サイト、パーティーなどで、サクラや既婚者が混ざっていたり、真剣に結婚を考えていない人が参加していたりする場合もあり、トラブルに発展することもあるという。
「気軽に利用できるものほど、結婚目的ではない方も参加されることもあるため、慎重に選ぶ必要がありますね。
その点、結婚相談所はそれなりの費用はかかりますが、結婚までの最短ルートだと私は考えています」と、立花さんは話す。
◆婚活にかかる費用は?
気になる婚活にかかる費用は、Bゼルムの場合、気軽に参加できる「お見合いパーティー」は(初回参加費)4000円、本格的に結婚相手を探す「お見合いサービス」は、1か月トライアルコースは5500円~。
本入会は、女性の場合、入会金・登録料5万5000円、活動サポート料11万円、成婚料22万円となっている。
「結婚相談所への入会は事前にプロフィール登録のほか、証明書類が必要になりますので、相手のバックグラウンドをあらかじめある程度知ることができます。
弊社では婚活パーティーでも、事前に自己紹介用紙に記入していただくので、相手を知る手がかりや会話のきっかけにしていただいています」と、立花さんが語るように、信頼できる結婚相談所なら安心してパートナーを探せると考えるシニアも多いようだ。
◆シニア婚活の現実とブームの理由3つ
じわじわと市場が拡大しているシニア婚活。なぜ50代以降の男女が結婚や再婚に目を向けるのか、立花さんは、シニアの婚活ブームの背景には3つの理由が考えられるという。
【1】2008年以降「熟年離婚」に注目が集まった 「2008年に『離婚時の年金分割制度』が施行されました。
つまり、夫が支払っていた厚生年金を離婚後に妻は分割してもらうことができるようになりました。
この制度が後押しとなり、離婚を決断するシニア女性が増えたと考えています。
このころから熟年離婚が注目され始め、それにともない“シニア世代の婚活”が活発になったのではないでしょうか」
厚生労働省の人口動態調査によると、2000年以降、緩やかに下降傾向だった離婚件数が、離婚時の年金分割制度施行後の2019年にグンと跳ね上がり、8000件増加している。
※参考/人口動態統計(確定数)の概況 ※参考/人口動態統計速報(令和2年4月分)人口動態総覧-対前年比較-※参考/人口動態統計速報(令和3年1月分)人口動態総覧-対前年比較-
【2】老後の不安や介護の悩みを共有できる相手がほしい 「結婚相談所への入会理由の多くは、男女ともに『気の合うパートナーと老後を過ごしたい』と考える方が多いですね。
女性の場合はとくに『老後の経済的な不安』から入会される方も多くいらっしゃいます」
実際に結婚相談所を活用した人たちの実体験を聞いてみると…。
「現在、親を介護中。親を看取ってから婚活したのでは自分もいくつになっているかわからないので、今のうちにお相手だけ探したいと結婚相談所に入会しました」(64才女性・介護士/埼玉県)
この女性は母親を介護中の68才男性と結婚したという。
「結婚されて2年経過しますが、お互い介護の現状に理解があるので、通い婚という形で楽しく過ごされているようです」と、立花さん。
50代60代は親の介護に直面する世代でもある。ある男性会員は、親の介護が終わったことが婚活のきっかけだったという。
「過去に婚活経験があるのですが、親の介護を終え、再び結婚相談所で婚活を始めました。以前は親と同居がネックでしたが、身軽になったタイミングも良かったのだと思います」(66才男性/千葉県)
50代・60代のシニア世代で死別経験のある方を対象とした婚活パーティーも主催されているという。
また、59才のあるシングル女性は、経済的な不安はないが、 「まもなく還暦。この先ずっとひとりで暮らしていくと思ったら、寂しくて夜も眠れないときがある」と、寂しい心情を明かす。
精神的な支えを求めて婚活を始める人も多いようだ。
【3】子供のすすめで婚活を始めるシニアも 「独立し家庭を持った子供には迷惑をかけられない」と考えていたところに、子供からすすめられて婚活に踏み切るシニアもいるという。
「以前は親がお子様の婚活をということで、母親が娘さんを連れて親子でカウンセリングにいらっしゃることが多かったんです。
それが、ここ数年で逆転して、お子様がシングルの父親や母親と一緒にカウンセリングにお越しになるケースが増えています」
「仙台在住です。娘や孫が暮らす東京で結婚生活を送りたかったので娘のすすめで入会しました。遠距離でも負担にならない方法を提案してくれて、結婚できました」(63才女性/宮城県)
「娘と一緒に入会しましたが、娘より先に私の貰い手が決まり、娘も安心したようです」(65才女性/東京都)
人生100年と考えると、50代60代はまだ道半ば。人生後半戦のパートナーを求めて「婚活」をはじめてみるのもいいかもしれない。
教えてくれた人
婚活アドバイザー・立花えりこさん
東京・銀座で創業29年目の結婚相談所・Bゼルム代表取締役。女性誌やウェブメディアなどで婚活についてコメントするほか、『現代ビジネス』では田原総一朗氏と対談。
『今年中に絶対結婚できるTV』(AGARUTV)講師役として出演するなど、シニア婚活ブームの火付け役として、メディアで幅広く活動中。
引用:NEWSポストセブン